「ナースの患者指導はメリットがたくさんある」取り戻そう、看護の役割り


 

最近の患者指導は、薬に関しては薬剤師が、食事に関しては栄養士が、運動機能に関しては運動療法士が、と役割分担になっています。
専門家が行う指導はどんな質問にも答えることができ、詳しく説明できる利点がありますが、日時を予約して決められた時間内で行われます。
パンフレットを用いることが多いと思いますが、患者さんはパンフレットを見ながら次々と耳に入ってくる言葉を理解しなければなりません。

 

退院指導のとき、病気は軽快しています。
このとき患者さんはすでに、病気のことよりも家族のことや仕事のことで頭の中がいっぱいなはず。
入院によって絶たれていた人間関係を取り戻すことで気持ちは精一杯です。

 

職場のこと、得意先のこと、仕事の成果、夫婦のこと、子供のこと、支払い、収入、スケジュール…
とりあえず自分の身体のことは置いておいて、元の生活を取り戻さねばなりません。
人によっては戻りたくない人間関係があるかもしれません。
再びストレスのある生活に戻ることが不安かもしれません。
そんなときに次々行われる退院指導。
患者さんの心に響いているのでしょうか?

 

 

現在、日本の生活習慣病患者は1000万人とも3000万人とも言われています。
平成26年の高血圧症患者だけでも3000万人、高脂血症200万人、糖尿病316万人、心疾患173万人、脳血管疾患118万人、慢性腎臓病30万人、腸に関係する癌疾患26万人…
昨年一年間で心疾患と脳血管障害で亡くなられた人が30万人です。

 

食生活、運動、睡眠などの生活習慣を改善すれば治る見込みがある疾患。
医療機関で行っている患者指導や、政府が行っている健康教育では、患者の心に声が届いていないという結果ではないでしょうか。
マニュアルに従って行う指導や集中的に行う指導では、効果がないという結果を表しています。
では、どうすることが効果をもたらすのでしょう。

 

 

フローレンス・ナイチンゲールの「看護覚え書き」を覚えていますか?

①換気と暖房…空気を適切な温度に保ち、換気を十分にすることが大切です。
②住居の健康…きれいな空気や水、下水溝の整備や採光などに気を配ります。
③小管理…チームを組んで看護をしている場合、リーダーが他の看護師の言動にすべて責任を持ちます。
④物音…騒音や内緒話など、不必要な物音は患者さんに不安を与えます。
⑤変化…よい環境の変化が気分転換となり、回復につながります。
⑥食事…体調などに合わせて、食べられるようにする方法について注意を向ける必要性があります。
⑦食物…栄養バランスの良い食物を摂取することが大切です。
⑧ベッドと寝具類…こまめにシーツ交換をします。肌触りなど、患者さんに合った寝具であることも重要です。
⑨陽光…健康維持や回復のために、陽光は必要なものです。
⑩部屋と壁の清潔…こまめに掃除を行い、清潔を保ちます。ほこりを除くためには、濡れぞうきんで拭くことが効果的です。
⑪からだの清潔…からだを拭くと気持ちもすっきりして、回復につながります。
⑫おせっかいな励ましと忠告…よけいな話をして、却って不安を与えてはいけません。
⑬病人の観察…看護師に貸す授業で最も重要なものは観察です。表情や顔色、排泄物などを観察して患者さんの体調がわかるようにします

 

またヴァージニア・ヘンダーソンの「看護の基本となるもの」もご存知でしょう。

①正常に呼吸する。
②適切に飲食する。
③身体の老廃物を排泄する。
④移動する、好ましい肢位を保持する。
⑤眠る、休息する。
⑥適当な衣類を選び、着たり脱いだりする。
⑦衣類の調節と環境の調整により、体温を正常範囲に保持する。
⑧身体を清潔に保ち、身だしなみを整え、皮膚を保護する。
⑨環境の危険因子を避け、また、他者を傷害しない。
⑩他者とのコミュニケーションを持ち、情動、ニード、恐怖、意見などを表出する。
⑪自分の信仰に従って礼拝する。
⑫達成感のあるような形で仕事をする。
⑬遊び、あるいはさまざまな種類のレクリエーションに参加する。
⑭“正常”発達および健康を導くような学習をし、発見をし、あるいは好奇心を満足させる。

 

これを見て気づきませんか?
ほとんどが日常生活の援助です。
看護師が日々追われている点滴や採血、投薬や検査、処置などの業務は、本来医師の仕事。
けれども看護は単にお世話することが仕事ではありません。
これからの看護に求められる本質は、もっと高次元なもの。
「看護覚え書き」や「看護の基本となるもの」に書かれた内容に基づいて行う、【関わり】が看護の本質なのです。

 

 

日常生活の援助を通して患者教育をしていくことが看護の役割り。
その人にとってちょうどいいタイミングで、ちょうどいい言葉で伝え、心に残る指導を行えるのが看護の仕事なんですね。
患者さんにとっては専門家の詳しい説明よりも、日常生活動作の中で聞くアドバイスの方が記憶に残ります。

 

移動するとき、食事をするとき、薬を飲むとき。
患者さんの頭の中には、きっと(?)があります。
そのタイミングを逃さずキャッチすること。そのためには患者さんのことをよく見ておかねばならないでしょう。
もっとも効果的な指導が行えるのは質問してきたとき。
聞き入れる心の準備ができているからです。

 

気をつけたい動作、薬についての知識、食べ方の工夫、時間の工夫など、その人の日常に合ったアドバイス。
気分転換の方法や、酸素を身体にしっかり取り込む方法、休息の方法。
同室者との人間関係や、医師との関係、病気との関係で生じる感情をうまく調整する方法など…
治療中から退院することを見通して、日常生活援助の中で指導を行っていくことが効果的です。
退院後に同じ状況が訪れたとき、患者さんは(そういえば、こんなこと言ってたなぁ)と看護師の顔や姿を思い出してくれるでしょう。

 

実際の看護の現場は患者さんとの時間がほとんどない状況です。けれども諦めずに看護の役割りを取り戻していきたいですね。
患者指導、健康教育は一方的なトークでは心に届かない。
看護は心に関わる仕事です。

 

 

 

【看護の本質とは】

看護の本質は「関わり」である。
コミュニケーションを通して心の問題を解き
その人なりの正道に従えるよう導くこと。
その人が正しいと思う日常生活が維持でき
健全な心と身体を取り戻す関わりが看護の本質である。
そのため看護師自身が実存的価値を持ち
自らの心身の健康を実践しているべきである。

山咲凛子

『看護の本質は“関わり”である』~理想と現実のギャップとは~

 

 

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