「忘れたいのに忘れられないのはなぜ?」ナースが学ぶ心と病気の連鎖 /第3講

ナースが学ぶ心と病気の連鎖
第3講「忘れたいのに忘れられないのはなぜ?」

 

大好きな彼から一方的に別れを告げられた。もう死ぬほど辛い。だから早く忘れてしまって元の私に戻ろう…。そう思って、忘れようとしますね。でも忘れようとすればするほど悲しみが込み上げてくる。そんな経験がありませんか?

そして私たちは悲しかった出来事や辛かったことを何年経ってもよく覚えています。この理由は脳の構造を知るとよくわかります。

第2講で、私たちは起こった出来事を五感=視覚・聴覚・体感覚(感情)・嗅覚・味覚の情報でとらえていることをお伝えしました。その情報は眠っている間に大脳新皮質に格納されて“長期記憶”として保存されています。

自分が覚えているか覚えていないかに関わらず、また気がついていたか気がついていなかったかにも関わらず、目に映っていたものや耳に届いていた音もすべて保存されています。

 

 

1週間前の彼と別れたシーンを思い出しているとき、実は脳は時間の感覚がありません。脳内には過去や未来と言った時間の概念がないのです。私たちは時計があるから時間を数字でとらえていますが、そもそも時間はあって無いようなもの。脳は認識しないんですね。

彼と別れたシーンを思い出しているとき、思い出している今の自分が大脳新皮質に保存した情報の中から、必要なものを集めて一つのかたまりにしています。その情報を元に、別れたときと同じような感情をつくり出し、同じような悲しい気持ちになっています。

つまり、思い出しているその瞬間に感情をつくっているんですね。それは今まさに体験しているのと同じこと。悲しい出来事を思い出すたびに、より悲しみが強くなっているような気がしませんか?

そう、私たちは思い出すたびに同じ経験を繰り返しているため、感情はより強く、記憶はより鮮明になっていくという特徴を持っています。

 

 

もう一つ、忘れたいのに忘れられない理由があります。脳はより鮮明に思い描いたものを実現する能力を持っています。ただ、注意点があります。私たちは“~しない”という否定形を想像できません。

たとえば「ケーキを食べない私」を想像してみてください。きっとケーキを食べているシーンが思い浮かびますね。その映像に×をつけたり、慌てて消したのでは?そして結局ケーキを食べてている自分が現実になるのです。

“忘れる”という言葉は“~ない”という表現ではありませんが、“思い出したくない”というのと同じ否定の言葉。忘れようと思ったとき、同時に彼のことを思い出しています。

ゆえに、忘れたいはずなのに経験がより鮮明になり、感情もより強くなって、悲しみは増幅されていくのです。

 

 

ここからは心と身体のお話です。

第2講で「ヘビだ!」と思った瞬間、脳は「止まれ」「力を入れろ」「身体を守れ」と身体に司令を出します。すぐさま足が止まり、全身の筋肉はキュッと固くなって緊張し、鳥肌が立つとお伝えしました。

第2講「怖いと立ち止まってしまうのはなぜ?」
https://wellnus.biz/archives/825

彼と別れたシーンを思い出しているときも同じ作用です。別れを告げられたときのように、身体を固くして目は一点を見つめ、息をすることも忘れて胸が締め付けられるような感覚がしていたとしましょう。思い出すたびに身体は同じ経験を繰り返しています。

呼吸は命を継続していくために必要不可欠なもの。脳は酸素供給が3分停止すれば細胞が破壊して元に戻らないと言われます。そこまでならないまでも、そのシーンを思い出すたびに身体は軽い酸欠状態になっています。

心臓から脳につながる“頸動脈小体”という血管で、身体は常に体内の酸素濃度を測定しています。体内の酸素が低下したことを察知するとすぐにその情報を脳に送り、脳の司令によってすぐにそれを補う機能が働きます。

心臓の拍動を早くしてたくさん血液を送り、酸素不足を補おうとするんですね。よって胸がキュッと締め付けられるような苦しさを感じます。

もし、一日に何度も別れた彼のことを忘れたいと思い、何度も同じ体験を繰り返していると、身体は頻繁に酸素不足の状態に陥っているため、少しずつ調子が悪くなってきます。

食欲がなくなったり、身体がだるくなったり、頭痛がするなど、徐々に身体症状が現れてきます。こうして神経症状が発生していくんですね。

 

 

心療内科や精神科に長く通院している患者さんの中に、深呼吸が苦手な人をよく見ます。それは過去の出来事を思い出したり考えこんだりしているときが多く、浅い呼吸ばかりしているため深呼吸ができない身体になってしまっているからです。

また眼球の動きに特徴がある人をよく見ます。目の動きが固く、偏った動きをします。これも一点を見つめて過去の出来事を思い出したり、考えこんだりしている時間が多いため、その習慣が身についてしまうんですね。身体が感情を記憶しているとも言えます。

また“カタレプシー”という身体症状があります。これは、ある特定のことについて考えると、同時に身体の一部分あるいは全身の筋肉が硬直して動くことができなくなる症状です。

小さな出来事でも繰り返し思い出していると感情がより強くなって、ショッキングな出来事のように拡張されていきますが、たった1回の衝撃的な出来事によって起こることもあります。筋肉が極度に緊張し、目の動きや表情、手足の動きや呼吸筋が制限され、自分で自由に動かすことができなくなる症状です。

心の状態が身体に現れています。

 

 

心の状態が身体に現れているのは、患者さんだけではないんですね。すべての人のすべてのシーンで心は身体に作用しています。自分とまったく同じ話し方や同じ表現をする人っていないと思いませんか?

それは話しているとき、人それぞれ自分の経験や記憶と共に心が身体に作用しているからです。自分ではなかなか気づきにくいのですが、あなたの目線や表情の変化、声の大きさやトーンの変化、口調、手足の動きや姿勢などに特徴が現れています。

普段から悩みやすい人や出来事に左右されやすい人は、考えこんでいるときの状態が身体の習慣になってしまっているため、言いたいことがうまく伝わらなかったり誤解されるなど、コミュニケーションに問題が起こりやすくなってきます。その結果、対人関係が苦手になっていくんですね。

心を柔軟にするには、身体を柔軟にすること。身体を柔軟にするには心を柔軟にしておくことが大切。身体は心の状態を記憶します。

 

もしあなたが彼にフラれた経験を早く忘れたいと思うなら。
忘れようとするよりも、一刻も早く次の恋愛を楽しむこと。

もしあなたが嫌な出来事を何度も思い出してしまうなら。
よっこらしょと身体を動かして、一刻も早く遊びに出かけましょうね^^

 

 

山咲凛子 1967年生まれ
Wellnessナース/NLPマスタートレーナー
看護師22年、コミュニケーションスクール主任講師10年。女性が自分らしく生きるためのコーチングや起業支援の経験を活かして、健康/予防を目的に個人活動を行う。受講生約400名、女性セラピストトレーナー150名育成、セッション数4000件から導き出した独自のセオリーを持つ。ナースサミット主催、Wellnessナースビジネスプログラム主宰。
主な情報は8年前から書き綴っている、看護師向け無料メルマガ【心と身体のStudyMail】にて。

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