「辛いとき胸が苦しくなるのはなぜ?」ナースが学ぶ心と病気の連鎖/第1講


 

ナースが学ぶ心と病気の連鎖
第1講「辛いとき胸が苦しくなるのはなぜ?」

 

心はまずどこにあるのでしょう?心が心臓にあると思われていたのは2500年前の話。アリストテレスは心臓で感情を生成して、血流に乗って全身をめぐり、再び心臓に戻ってくると考えていました。

今もなんとなく胸のあたりで感情を感じたり、胸に手を当てることがありますが、それは2500年前の名残なんですね。現在は脳科学の研究が進み、感情は脳内で生成されることがわかっています。よって心理を学ぶということは、脳の理(ことわり)を学ぶ“脳理学”なのです。

2500年前のアリストテレスやブッダの時代から“心”は探究されてきましたが、心とは姿形がなく感覚であるため、文章で表現される文学のように扱われてきました。ところが近年“心”の理解が変わってきています。

 

 

1970年代から“認知科学”がめざましい発展を遂げています。認知科学はコンピューターと共に発展した脳科学。コンピューターにどのようなプログラムを入力すれば、人間のように柔軟な判断ができるのかを研究している最新の脳科学であり、心理学なのです。

たとえば、お店に人が入ってメニューを見て注文し、食べてお金を支払って出ていくのが“レストラン”であるとコンピューターに入力した場合、ファーストフード店や食券の場合はコンピューターは“レストラン”と認識しません。認知科学はどうすればコンピューターが人間のような様々な判断ができるのかを探究し、そうしているうちに人の脳の機能がどんどんわかってきました。

ところが最近ではコンピューターの機能が人の柔軟な判断能力を超えつつあります。囲碁やチェス、将棋では名人がコンピューターに負けるということが起こっています。今後もコンピューターやロボットの精度が上がると、人が行う職業がなくなっていくと言われています。

 

 

人間には“情動(心)”があります。たとえ名人のような素晴らしい判断力を持っていても、私たちには緊張したりプレッシャーを感じたり心の動きがあるため、適切な判断力があっても鈍ってしまいます。昨日と同じようにパソコンのキーボードを打っていても、打ち間違えが多い日などありますね。心は常に状態を左右してパフォーマンスに影響しています。

人間の柔軟な判断力を超えたコンピューターやロボットには情動がないため、その日の状態によって左右されることがありません。与えられた仕事を予定通りこなすことが可能なのです。豊かな人生を送るために情動は重要ですが、能力が必要とされる場面においては心をコントロールしていく力が求められています。

ただし、コンピューターやロボットにはできないことがあります。それは“創造力”。創造力は過去の豊かな知識や経験、未来を想像する力、センス、集中力、身体の状態、意識の状態など、さまざまな状況が整ったときに発揮されます。豊かな感情の要素が必要ですが、感情にとらわれている状態では発揮し難い能力で、やはり心を整えることは欠かせませんね。

 

 

それでも、辛いときや悲しいとき、切ないとき、やはり胸が苦しくなりますね。確かに感情は脳内でつくられていますが、胸の重苦しさや不快感は解剖学的な視点で考えると説明ができます。

嫌なことがあってグッと感情移入しているときの自分の姿を思い出してみてください。おそらく身体は縮こまってじっと同じ体勢をとり、目は一点を見つめているでしょう。この状態は体内に呼吸が入りにくく、血液循環が滞りやすい状態です。

大人の身体は約60兆個の細胞で構成されていますが、何ミクロンという一つ一つの細胞は酸素をエネルギーとして活動しています。肺から取り込んだ酸素は血液中に入り、心臓の鼓動によって全身の隅々の細胞に届けられています。そしてエネルギーを生成した後にできる二酸化炭素を血液中に排泄し、肺まで届けて呼気で吐き出しています。

つまり感情にとらわれているとき呼吸が浅く、血液循環が停滞して身体は酸欠状態。肺は十分空気を取り込めず、心臓は十分なポンプ機能が果たせないため、二酸化炭素が蓄積してきます。よって胸が苦しい感じがするんですね。

そんなときは身体を伸ばして深呼吸をしてみましょう。きっと感情が少し和らぐはずです。どんなに気持ちが落ち込んでいても、歩きながら口笛を吹けば感情は変わります。長時間座り込んでいる場所から立ち上がるだけで、悩みから少し離れることができます。

心と身体は深く関連していて、心がどうにもならないときは身体からアプローチすることが可能なのです。

 

 

感情にとらわれやすい人、悩んでいることが多い人は、軽いとはいえ酸素が欠乏している時間が多くなります。すると小さな細胞はダメージを受けやすく、それが他の細胞にも波紋のように拡がって、やがて一つの機能に影響します。そうして胃痛や頭痛や腹痛などの身体症状が起こり、食欲低下や倦怠感を招いていきます。

心と身体の問題を解決して病気を防ぐ、もっとも簡単な方法は“体操”です。ラジオ体操のような簡単なものでも毎日続けることによって、心の状態が是正されていきます。体操で身体の中心軸をとり前後と左右のバランスを整えて、心のバランスも取り戻しましょう。

 

 

 

山咲凛子 1967年生まれ
Wellnessナース/NLPマスタートレーナー
看護師22年、コミュニケーションスクール主任講師10年。女性が自分らしく生きるためのコーチングや起業支援の経験を活かして、健康/予防を目的に個人活動を行う。受講生約400名、女性セラピストトレーナー150名育成、セッション数4000件から導き出した独自のセオリーを持つ。ナースサミット主催、Wellnessナースビジネスプログラム主宰。
主な情報は8年前から書き綴っている、看護師向け無料メルマガ【心と身体のStudyMail】にて。

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