母親の抗がん剤治療に反対し、ケンカしたまま母を失ってしまった娘は… /家族死生観②

数年前のことです。
ある女性が、がんと診断されたの母親のことを投稿していました。
彼女は母親と2人暮らしですが、母は抗がん剤治療を受けているようでした。
母が治療を受けるたびダメージが大きくなるのを見兼ねて、「抗がん剤もうやめたら?」と言ったようでした。

 
ところが母親は聞き入れようとせず、何度も説得を試みた結果、言い合いになりました。
病院に行っても気まずい雰囲気が流れ、彼女は徐々に、病院に行く足取りが重くなっていきました。
その数日後、お母さまは息を引き取られました。
女性は「しばらく投稿を休みます」と投稿していました。

 
投稿記事のコメントには…
「早く元気になってね」
「大丈夫だよ、きっとお母さんはわかってくれてるよ」
「早く復帰されることを願っています」
「投稿を待っています」
と、励ましの言葉が寄せられていました。

 
うーん。。私は少し違和感を感じたんですね。
早く元気になってくれることは、望ましいこと。
だけどそれは女性にとってどうなのだろうか…?と。

 

 

 
私は敢えて個人メッセージを選びました。
そしてこう書きました。
「時間をかけて、ゆっくり元気になってください。急がないでください。」

 
こんなメッセージを送る人は、あまりいないと思います。
ですが母親を亡くした悲しみは、彼女の人生において今しか感じることができない感情なのです。
しかも心の中にはケンカして口を利かないまま終わってしまったことに、後悔の念があるでしょう。
それをごまかすことの方が、後々彼女を苦しめることになるような予感がしました。

 
そして、この言葉も付け加えました。
「もういいと思うまで、泣きたいだけ泣いてください」
現代人は普段からストレスが多く、感情に蓋をしてしまっています。
抑え込んだ感情は、体の内側で増幅し、後になってゆがんだ形で表現されることになるのです。

 
そして「お母さんが使っていたものや、残しているものを整理しながら、心の中で十分にお母さんと対話してください。」と伝えました。
家族を失ったとき、もっとも大切な作業です。
物は、その主人を表現してくれているからです。

 
こんなものを持っていたんだ、こんなことをしていたんだ、こんなことが好きだったんだ…
今まで知らなかった家族の姿が見えてくることでしょう。
心の中で何度でも問いかけてみればいいのです。
きっと何度でも返事をしてくれることと思います。

 
最後に「だけど、元気になったら必ずメッセージください。待っています。」と付け加えました。
出口を用意しておいてあげるためです。
悲しいときは、実はひとりで泣いている方がラクで、人に会うのがおっくうになっていきます。
悲しみの淵に堕ちて上がって来れなくなってしまうことがあるため、出口を準備しておく必要があるのです。

 

 

 
私自身は、父親を亡くし喪主を務めたとき、49日の法要が終わるまで休職させてもらいました。
最期に付き添っていた時期も合わせると60日間休ませていただきました。
私はその感謝をお返しするために、50日目には必ず復職しますと約束していました。
それが私にとって出口になっていたため、それまで安心して悲しみ、時間をかけて父が生きた足跡を辿ることができました。

 
彼女が気持ちを取り戻すまでひと月もかかりませんでした。
シンプルなお礼のメッセージが来ました。
そして1年くらい経った頃でしょうか、私の授業を学びにやってきました。
「あのときの、あのメッセージがあったから…。学ぼうと思いました」と。

 
通常、一親等が亡くなっても忌引きは7日間です。
悲しみの淵に落ちてしまわないように配慮されている側面もあると思いますが、現代人は逆に感情を抑え込んでしまうため、時間をかけて感情を受け止めた方が、後々健全な気持ちになれるのではと考察します。
せめて命を尊重する医療現場から、大切な家族を亡くした職員の気持ちを重んじてくれることを願います。

 

 

 
「家族死生観」
残された家族が生きていくために

 

 

 

 

 

 

山咲凛子 1967年生まれ
Wellnessナース/NLPマスタートレーナー
看護師22年、コミュニケーションスクール主任講師10年。女性が自分らしく生きるための心理サポートや起業支援を行ない、現在はその経験を活かして、健康/予防を目的に活動中。卒業生約400名、セラピストトレーナー150名育成、セッション数4000件から導き出した独自のセオリーを持つ。ナースサミット主催、Wellnessナースビジネスプログラム主宰。
主な情報は8年前から書き綴っている、看護師向け無料メルマガ【心と身体のStudyMail】で配信しています。

 

 

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