新人ナースの教育は無意識開花☆②勤務が終わったときの質問は?


 
あなたが看護師デビューをしたときどうでしたか?
自信があったでしょうか。無かったでしょうか。
看護学校を卒業してすぐに自信を持って就職している人はおそらくいませんね。
私たちはみんな自信がないのです。
それは“生物学的に”正常なことであり、“社会的に”もっとも順応した在り方なのです。

 

… … …

就職したばかりの看護師たまちゃんも自信がありません。朝出勤するときから(今日は何も失敗しませんように…)(今日は何も注意を受けませんように…)と祈る気持ちで出勤します。朝礼前に患者さんの情報収集をしようとカルテを見ていると、先輩ナースに「ちょっとごめん」と言って体を押されました。たまちゃんはビクッとしながら「すいません。。」と言って端に寄りました。

 
先輩ナースは朝礼の準備をするために、急いで周辺の整理を行なっています。処置をこなしながらバタバタと朝礼の時間に間に合うように動いているだけですが。たまちゃんから観える世界は、ナースステーションにたくさん人がいて、まだ知らない人ばかりで、管理者もいて、精一杯気を遣っているのに気が利かない自分を感じてしまいます。

 
たまちゃんは指導者と一緒に患者さんの点滴に行く予定でした。「必要物品を揃えておいてね」と言われ、たまちゃんは慎重にメモ帳を見ながら金属トレイに処置物品を集めていきました。トレイを見て(これでOK)と思いました。ところが指導者が来てトレイを見ると、絆創膏が入っていませんでした。

 
たまちゃんは尋ねられます。「これで全部?これで出来る?」(あれ?何が足りないのかな)と焦ったたまちゃんはトレイを見ますが、気がつきません。「えっと…」「テープがないよね。これだと固定ができないよね。」と言って、指導者は引き出しからテープを取り出して入れました。たまちゃんは「すみません…」と言って目線を下げ、身体を硬くしました。(慎重にメモを見たのに…)(なんで私は必要物品も揃えられないんだろう…)

 
そして今日のたまちゃんは、ベッド上安静の患者さんの身体を拭くケアを先輩と一緒に行います。ベッドで寝たままの状態で熱湯と石鹸を使って行う清拭は、必要物品がたくさんあります。たまちゃんは、またメモ帳を見ながら一つ一つ揃えていきました。指導者が来て、患者さんのところに行く前に物品が揃っているかどうかチェックリストを見てチェックしました。ちゃんと揃っていたのでホッと胸を撫で下ろしました。

 
そして指導者が担当する役割りと、たまちゃんが担当する役割りを決めて患者さんのところに行き、清拭を行いました。終わってから指導者は、再び“たまちゃん用の”チェックリストを取り出して、できていたところに◯を、できていなかったところに×を書き込みました。

 
そうして、なぜできていなかったのか、どうすれば次回はうまくできるかについて振り返りをしました。たまちゃんは自分が要領の悪いナースなんじゃないかと感じました。いえ、要領の悪い新人だと思われているのではないかと心配し始めました。

 

… … …

 
たまちゃんは勤務が終わったとき、何を思うでしょう?
邪魔な場所に立っていたこと
必要物品の準備ができなかったこと
清拭が手順通り行えなかったこと
…自分自身の×を感じながら一日を終えるのです。

 
すべての生物は“生命を維持して種を存続していくこと”を目的として生きています。
そのために気がつかなければならないのは“危機”や“失敗”。
たとえば栄養が十分摂れているときは何も気づかなくて構いませんが、栄養が摂れていないとき、“ヤバい”と気づかなければなりません。
命の存続に関わりますから。

 
たまちゃん自身も、自分の危機に気づきます。
邪魔な場所に立っていなかったときの自分に気づくことはなく、邪魔な場所に立っていた自分に気づきます。
要領よくできていた自分に気づくことはなく、要領よくできなかった自分に気づきます。
チェックリストの◯は問題視しないため、×に気づきます。
もちろん、ここで書いているのはたまちゃんができなかったことだけを書いているので、できなかった部分だけがフォーカスされますが。
本当はちゃんとできていたことや笑っていたこともあったはずなのに、一日を振り返ったときに思い出すのは“できなかった自分”なのです。

 
そうしてたまちゃんは帰宅後、できなかった自分を何度も何度も繰り返し思い出します。
同僚と話しながら、一人で歩きながら、お風呂に入りながら、ご飯を食べながら、テレビを見ながら…
今日の“できなかった自分”を思い出しています。
それは、二度と同じ危機や失敗を繰り返さないために。
自分自身の記憶に強く焼き付けています。
生命を存続していくために自分自身を守っているんですね。
生物学的に正常な機能ですが、無意識的に行なっていることです。

 

 

 
“できない私”は社会のシステムを安定させる役割りも行なっています。
社会にはなぜ「役職」や「肩書き」があるかご存知ですか?
役職や肩書きを与えると、人は上を目指して一生懸命頑張ることがわかっているからです。
頑張った人には役職や肩書きとほんの少しの昇給を与えれば、人はがむしゃらに会社のために働くことを目論んだ上でつくられたシステムなのです。

 
そうすると、上の立場の者より仕事ができる新入職員が入って来た場合、職場は困るわけです。
できる人であっても“できない私”でいてもらわなければ、上下関係のシステムが安定しないからです。
仕事ができる有能な職員が入って来たとき職場の調和が乱れるのは、皆それぞれが自分の立ち場を守ろうとするからです。
たまちゃんは本来ナースの仕事が大好きで、天職と思えるほど楽しくて、本当は優れたナースなのかもしれませんが、そんな自分になってはいけないことを無意識的に感じ取ってしまうのです。

 
就職の面接では、その人の特性を知り、会社に対して力を発揮してくれるかどうか見極めようとしています。
けれども会社に入った途端、社内規定が適応されます。
それは社内の調和を図るための大切なルールですが、同時に個性を抑えるもの。
みんなと同じ時間に出勤し、同じ制服を着て、同じ規定の中に入り、個人の能力が発揮できない作用をもたらしています。
就職したときは意気揚々としていたのに、就職した途端に意気消沈してしまう新社会人が多いんですね。

 
マニュアルもそのうちの一つ。
患者さんに対して同じサービスが提供できることを目的としていますが、逆から見ると、マニュアルに従って行う=個性を発揮してはいけない、ということを示しています。
そうして“できない私”を見つけ出し、“できる私”を表出しない方がいいことを感じたたまちゃんは、看護の仕事に愉しみを感じなくなっていきます。

 

 

 
もしかするとあなたは、「でもやっぱり新人のうちは…」と言うかもしれません。
ではいつになったら新人でなくなるのでしょうか。
翌年に新人が入職して来なかったら、たまちゃんはずっと新人ナースの立場?
そしていつになればマニュアルから解放され、会社の規定から解放されるのでしょうか。
今、看護の仕事を愉しいと思えないたまちゃんが、将来はきっと愉しくなると思える日が来るのでしょうか。

 
さて、あなたは新人ナースにどう関わりますか?
マニュアルもチェックリストも無くせない、社会的システムを変えることもできません。
“生物学的に”できなかった私を繰り返し思い出して落ち込んでしまう新人ナースが、明日の仕事に愉しみを見出すための関わり方は?
“社会的に”できない私を強いられている新人ナースが、個性を発揮できるようになるための関わり方は?
勤務が終わったときの質問が、新人ナースの行く末を左右します。

 

 

新人ナースの教育は無意識開花☆
勤務が終わったときの質問は?

 

1.勤務の最後によかったことを3つ質問をする

新人ナースは“できない私”に十分気づいています。
“うまくいった私”に気づかせてあげましょう。
今日の勤務をどんな気分で終えるかによって、明日の心構えが変わります。

 
この方法は非常にパワフルです。
以前、仕事が続かず転職を繰り返しているクライアントさんがいました。
家族関係も恋愛関係もうまくいかず収入がない30代の女性ですが、あるとき周囲からの話で、彼女に被害妄想があることがわかりました。
そこで「毎日3つ、良かったことを報告してください」とお願いしたところ、仕事に楽しみを見出すようになり、家族関係や恋愛関係も良くなって、いつの間にか被害妄想もなくなりました。
被害妄想であることに本人が気づかないまま治ってしまったのです。
お試しくださいね。

 

 

2.「質問ある?」と聞く

指導者は新人ナースによく質問をします。
あなたの質問に新人ナースが答えることができなかった場合、あなたは「調べてきてね」と言うでしょう。
そのあと新人ナースが思い出すのは、調べることよりも“答えられなかった私”です。

 
また、新人ナースのために質問をしているかもしれませんが、新人ナースが答えられないことにより、同時に指導者として“認められたい”という欲求を満たしています。
指導者は自分が答えを知っている質問を、新人ナースにすべきではありません。
なぜなら、指導者として“自信がない私”が伝わり、新人ナースと指導者の関係に歪みを生じさせてしまうからです。
質問に答えるべき立場なのは指導者。
新人ナースに質問を聞きましょう。

 

 

3.自分の経験を話す

上の立場の者が「◯◯してみたら?」と提案してみたつもりで言ったこと。
下の立場の者が受け取ると、指示・命令になります。
あなたが提案したことに従わないわけにいかないのが新人ナースの立場であることに気づきましょう。
行動を示唆するよりも「私のときは◯◯したよ」「他の人は◯◯をしてたよ」と、自分の体験談や人の体験談を語りましょう。
その方法を選ぶかどうかは新人ナース自身が決めることなのです。

 
「新人ナースの教育は無意識開花①☆仕事中は放っておく」を参考に。
https://wellnus.biz/archives/1534

 

 

さいごに

新人ナースができなかった部分にフォーカスするのは行動レベルの指導なんですね。
新人ナースの人間性を育てるために、指導者自身が心の成長を^^

 

 

 
山咲凛子 1967年生まれ
Wellnessナース/NLPマスタートレーナー
看護師22年、コミュニケーションスクール主任講師10年。女性が自分らしく生きるためのコーチングや起業支援の経験を活かして、健康/予防を目的に個人活動を行う。受講生約400名、女性セラピストトレーナー150名育成、セッション数4000件から導き出した独自のセオリーを持つ。ナースサミット主催、Wellnessナースビジネスプログラム主宰。
主な情報は8年前から書き綴っている、看護師向け無料メルマガ【心と身体のStudyMail】にて

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