「ドーナツで窒息死」ベテラン看護師であっても気を抜けない。自分自身を守るすべを身につけよう


 
日本の高齢者数は約3500万人、90歳以上は200万人を超えました。
内閣府の『平成29年版高齢社会白書』によると、要介護(要支援含む)認定を受けた高齢者数は592万人になっています。
そんな中、衝撃的な記事を見ましたー

「ドーナツで窒息死」ベテラン准看護師に有罪判決の波紋
無罪を求める署名は40万超え

(文春オンライン)

 

記事に書いてあることがすべてではないと思います。ですが私たち看護師はこの事件から、今後同じことが起こらないようにすると同時に、自分自身を守っていくすべを考えなければなりませんね。これから先、医療も介護も点数が削減され職員が減らされる恐れがありますが、高齢者は2035年まで増え続けます。病院にいればよほどのことでなければ組織や医師の指示によって守られていますが、これからはそうもいかないのではないでしょうか。

 

おやつタイムをやめる?

おやつタイムは大方の施設やデイサービスで行われています。施設に入所されている方の楽しみは“食べること”に限られていることが多く、施設側もより良い時間を過ごしてもらいたい、楽しみを持ってもらいたいという想いで提供しています。ですがこのような事件が起こると、おやつタイムを継続するかどうか考えさせられます。

 
「ドーナツが危険なのでは?」とも思います。食事は利用者さんの嚥下機能によって分けられていますが、その管理は大変なもの。作る人、盛り付けする人、配膳する人が間違わないよう、色の違う名札で一目瞭然になるよう工夫されています。職員数の少ないデイサービス等において、人によっておやつを変えることは難しいかもしれません。

 
先日、88歳で施設に入居している叔母を訪ねたとき、小さなドーナツを持っていきました。もちろん私と一緒に食べましたが「わぁ、ドーナツなんて何年ぶりかなぁ?!」と言って喜び、2人でコーヒーを入れて、美味しい美味しいと言って食べました。戦後の貧しい時代に欧米から入って来たケーキやお菓子を、高齢者さんたちに喜ばれるんですね。元気な人にはそれ相応の楽しみを持っていただきたいし、危険回避とは言え、おやつタイムをなくしてしまうのは残念なことです。

 

嚥下機能訓練をする?

嚥下機能は喉(のど)にある蓋の反射です。通常息をしているとき喉の蓋は開き、肺に空気が送り込まれるようになっています。食べ物が流れ込んで来ると蓋をして、食物が肺に流れ込まないようにする反射機能です。この反射はおよそ40代から低下し始めます。もちろんそれぞれの身体能力や意識によって差がありますが、40代頃から体力の低下や、瞬間的に危険を回避する反射が鈍くなったなぁと感じる人が多いのではないでしょうか。

 
では40代になったら嚥下機能のトレーニングをすることが可能でしょうか?仕事や家事・育児に追われて忙しい40代が、まださほど自分の身体の衰えを感じていないときに、老化したいためのトレーニングをすることは難しそうですね。健康というのは通常無意識であり、失って初めて気づくもの。危険を感じないかぎり、予防しようという考えには至らないものです。

 

看護師の能力アップ

私たちには目が2つしかありません。体は1つしかありません。被告になってしまったナースは全介助の人の世話をしていて、後ろの人の異変に気がつきませんでした。ですが人間は鍛えれば3つめの目を育てることが可能だとご存知ですか?【目の前の人を見ながら全体を俯瞰する】こういった力が人間には備わっているのです。

 
人の意識状態は2つあります。1つは考え事をしているとき、脳内には思考が流れています。もう1つは外側に意識を向け、五感が鋭敏になっているとき。後者の意識状態のとき、全体が俯瞰でき、わずかな物音や空気の変化、エネルギーの変化に気がつくことが可能です。もちろんトレーニングが必要ですが、本来備わっている能力であり、通常あり得ないパフォーマンスを発揮できるようになります。

 

自分自身を守るために

これから先、こういった不可抗力なことで医療者の責任を問われる事件が多くなることが予想されます。なぜなら、医療がこれまで至れり尽くせり提供してきたためです。病院の受診で、トイレに入っている間に脳梗塞を起こし延命治療が施された患者の家族が、トイレの外で見守っていた介護士を責めるということがありました。また、延命治療をしないと伝えていたのに何故こんなことに?!と訪問医療のクリニックも責められました。

 
今後、医療費削減のため職員の数が減らされ、業務がキャパオーバーになっていく可能性があります。ですが要介護者は増える一方です。となれば、ひとりひとりの能力を上げて自分自身を守っていくしかないかもしれません。また、患者の自立、家族の自立を怠り、医療への依存心をつくって来たのは私たちの教育不足であると言えます。医療者自身が変わるべきときが来ているのではと思います。

 
時代を象徴しているかのような今回の事件、あなたはどのように考えますか?

 

 

 
山咲凛子 1967年生まれ
Wellnessナース/NLPマスタートレーナー
看護師22年、コミュニケーションスクール主任講師10年。女性が自分らしく生きるためのコーチングや起業支援の経験を活かして、健康/予防を目的に個人活動を行う。受講生約400名、女性セラピストトレーナー150名育成、セッション数4000件から導き出した独自のセオリーを持つ。ナースサミット主催、Wellnessナースビジネスプログラム主宰。
主な情報は8年前から書き綴っている、看護師向け無料メルマガ【心と身体のStudyMail】にて。

関連記事

  1. インフルエンザワクチンは予防の効果あり?なし?

  2. 「病気は悪じゃない!」看護師がモヤモヤする医療の矛盾!⑥

  3. フィンランドは「親の介護のために離職する」禁止。自分の人生を…

  4. 「その検査、本当に必要?!」看護師がモヤモヤする医療の矛盾!…

  5. 「虐待と言われる治療がある!」看護師がモヤモヤする医療の矛盾…

  6. 「投薬はナースの仕事じゃない」目覚めよう。看護の本質は“関わ…

  1. 看護師が公の人であるために大切なこと/ナースの起業

  2. 看護師が独立するために最も大切なこと

  3. 「体が勝手に痩せていく」生活習慣病予防ダイエット5つの法…

  4. 看護師の新たな国づくり「日本を健康先進国に」

  5. 「家族死生観」当日の様子を報告します/ナース大会議@東京…

  6. 人は最期に誰を想うのだろう?/家族死生観⑦

  7. 延命治療は必ずしも幸せとは限らない/家族死生観⑥

  8. <真実の人>は死を選ぶ/家族死生観⑤

  1. 「体が勝手に痩せていく」生活習慣病予防ダイエット5つの法…

  2. 人生の最期を安心してほしい/家族死生観④

  3. ここに来れば健康になれる「ナース・ウェルネスセンター」構…

  4. 亡くなった人にしか伝えられないことがある/家族死生観①

  5. 「家族死生観」残された家族が生きていくために@東京ナース…